天才ガロアの発想力 [数学]

小島寛之

ガロアの理論を、とてもわかりやすく書いてある。
詳細できちんとしたものではないかもしれないが、ガロアの理論をかじったような読み物とは一線を画している。

あとがきに「本書は13歳だった頃のぼくを想定読者に書きました」とある。
著者は東大の数学科を卒業しているが、現在は経済学部の教授である。
このような言い方は大変失礼なのだが、本物の数学者ではない。
本物の数学者ではないからこその数学の本が書けているのではないかという気がする。

まったくの読み物でもなく、数学書でもない、数学に興味を持つ人が、ガロア理論の大まかな流れをつかむにはうってつけの本ではないだろうか。
似た本として「天才数学者はこう解いた、こう生きた」(木村俊一)というおもしろい本がある。この本にも、「5次方程式に解の公式が存在しないことの証明」という項目があるが、ページ数が少ない分、かえってわかりにくい面もある。
この「天才ガロアの発想力」では、ある程度の時間をかけて、有理数の拡大体Q(√2)からはじまって、2次方程式の解の対称性などを通じて、基本的な考え方を伝えている。
もちろん、きちんと勉強したい人は、他の数学書を読むべきだろうが、数学に興味がある大人や、それこそ、ちょっと背伸びをしたい中学生には一番適当な本かもしれない。

付け加えとして、「数Ⅲ方式ガロアの理論」(矢ヶ部厳)という本もあり、これは、ほんとうに、ねちねち(!?)と実に丁寧に書いてあるので、根気のある人にはけっこうよいかもしれない。(かなり分厚い)

最後に、小島さんが選んだ参考文献、かつ、お勧めの本というものが紹介してある。

草場公邦「ガロワと方程式」
中島匠一「代数方程式とガロア理論」
ジョン・ダービーシャー「代数に惹かれた数学者たち」
久賀道郎「ガロアの夢~群論と微分方程式」
M.A.アームストロング「対象性からの群論入門」
黒田玲子「生命世界の非対象性」
伴克馬「ガロア理論の世界観」(現代思想 青土社2008.11月号)
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