凍傷 [小説]

新田次郎

新潮文庫「強力伝・孤島」より

富士山の気象観測所をつくるために、文字通り命がけでその半生を捧げた佐藤順一技師の物語。

「風速計の接点が磨耗しているから取替えを要す」
昭和7年。8月1日、正式気象観測が佐藤氏から若い観測者の手に移される最後の日、後を引き継ぐ主任技師が気象観測日誌の1ページ目を開いて「先生、何か記念に書いてくれませんか」と手渡されたときの言葉だそうだ。

実名で書かれているし、わざわざ著者が経過も事実に齟齬しないように書いたと明記しているようにかなり佐藤氏の人となりを表しているに違いない。
名短編。
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