下町ロケット [小説]

池井戸潤

佃製作所の社長、佃航平さんは7年前までロケットのエンジン開発の研究所で働いていました。
しかし、種子島でのロケットの発射失敗で、責任をとって辞職。父親のやっていた小さな工場の社長となります。
先日読んだ「宇宙兄弟」に影響されて、以前買って積ん読状態だったこの本を読み始めました。
と、あっという間に読了。
食事の時間さえ惜しいような気がして読みました。

佃製作所のプライド。大企業の奢り。
読者はもちろん佃製作所の方に思い入れをしてしまうわけですが、その佃製作所自体も一枚岩ではありません。
ロケットエンジンの弁の部分の特許をきっかけに、いろいろな人の思惑が入り乱れます。
いやー。おもしろかった。
「組織」について、仕事についている人全員が考えさせられることでしょう。


さて、他に宇宙に関するおすすめの本は

1.NASA(浦沢直樹)
2.アポロ13号奇跡の生還(ヘンリー・クーパー)
3.宇宙からの帰還(立花隆)
4.宇宙兄弟(小山宙哉)
5.月をめざした二人の科学者(的川泰宣)

の5冊かな。
もちろんDVDの「アポロ13」の着地シーンも大好きです。ジーン・クランツ役のエド・ハリスのかっこよかったこと!

名人伝 [小説]

中島敦
http://www.aozora.gr.jp/cards/000119/files/621_14498.html


弓の道を究めようとした紀昌さんのお話。
とぼけた話だが、どんな世界でも本当に極めてしまったら、ひょっとしたらこうなってしまうのかも・・・というような気がしてしまう。

中島敦というと「山月記」だが、この名人伝もなかなかではないか。
ユーモア小説(?)として読むべきなのだろうが、何か、それだけでないものが心にひっかかる。
近頃、五輪書などを熱心に読んでいたせいかもしれない。

以前、江守徹さんの朗読で新潮カセットブックで聞いたことがあるが、これはとてもよかった。
ぜひCDで発売してほしい。

この「名人伝」については、作者が何を言いたかったのか、いろいろ説があるようだが、下のコメントはとてもおもしろかった。
http://okwave.jp/qa/q3096253.html

百済観音 [小説]

曽野綾子

新潮文庫「一条の光」より

高校の時、初めて読んで、とにかく感動した。
それ以来、もう何度も読み直している。
しっかりもので自他ともに認める浄法寺さん。
悪い人ではないらしいが、どうにもだらしない光徳寺さん。

人間のおろかさとすばらしさを書いた
まさに「ばかもの」たちの行動。

先日、「ばかもの」という作品を読んで、その浅さにびっくりしたが、
この短編こそまさに「ばかもの「たち」」という言葉がぴったりなのではないか。

だらしのない光徳寺さんの寺から発見された阿弥陀の坐像から始まる物語。
なぜ、こんなすばらしい作品がちっとも有名でないのだろう?

今の高校生くらいの人にも、ぜひ読んでほしい。

あなたは浄法寺さんが好きですか?
それとも光徳寺さんが好きですか?
それとも?

ばかもの(2)帯を読んで [小説]

かたづけをしていたら、先日読んだ「ばかもの」の帯が出てきた。

ある人のコメントが載っていて
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人間の美しさを描いて、ここまで説得力のある小説はないでしょう。今年ナンバー1の小説と云いたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とあった。

このコメントを書いた人は、たまたま自分の経験してきたことや読んだタイミングがぴったりあって、ほんとうにそう思ったのだろうか。それとも宣伝のために、思ってもいないことを書いたのだろうか。
せめて、本気でよい本と思ってほめていることを祈る。

ただ、少なくとも、このこれ以降、この人の推薦するものに関して、自分はまちがいなく読む気がしなくなるだろう。

先日、「ブラック・スワン」を誉めていたスマップの稲垣さんに対して、とても好印象をもつようになった。それととても対照的だったので、(あまりの帯の言葉に)つい書いてしまった。

付け加えとして、
帯の文章にびっくりしたので、かなり否定的に書いてしまったが、「ばかもの」じたいは、先日書いたように、「非常に浅い」と感じた小説ではあったが、帯の文章を読んで感じたほどのいやな印象はありません。(つまり、よくもなく、わるくもなくという感じ)
あしからず。

(帯がなぜか斜めに切ってある。意図的とは思うが、これもとてもセンスがわるい・・・)

ばかもの [小説]

絲山秋子

最初DVDに興味をもったが、実際に見たのはこの小説。
まあ、話としてはよい話しだし、おばやんはけっこう魅力的だ。
しかし、なんか・・・浅い。
人間も浅いし、人間関係も浅い。
すらすら読めるというのはよいところだろうが、それにしても浅い。

最初、エッチなシーンが続くが、なんかエッチに感じない。
この絲山秋子という人は、あまり人生経験が豊富ではないのではないか、と感じた。

ヒデも額子もネユキもまったく魅力が感じられない。しいて言えば、翔子さんはなんかいい人みたいだが、だからと言って、魅力的かといえば、そうでもない。
なんにしても、なんとも「浅い」小説だった。

宮本武蔵 [小説]

司馬遼太郎

吉川英治の宮本武蔵像が大きすぎるが(ずいぶん以前に読んだ)、こちらはとても簡潔。しかもおもしろい。とはいえ、もはや小説とはいえないというか、宮本武蔵解説文の趣が。
以前、下関に行ったことがあるが、あの時、巌流島まで足をのばせばよかったと後悔。
やはり佐々木小次郎との一戦が一番おもしろかったかもしれない。
晩年のところが省略されてしまっているが、五輪書を書いた頃の話をもっと読みたかった。

バガボンド20巻くらいまで持っていたが、絵が気持ち悪くて、読むのをやめていた。続きを読みたくなった。
吉川さんの本ももう一度読み直してみようかな。
もちろん五輪書も。

ノルウェイの森 [小説]

村上春樹

「限りない喪失と再生を描き・・・」という言葉が文庫の裏にあった。
まさしくそんなお話。

この小説を通して魅力的な登場人物はほとんどいない。
しいてあげれば、ハツミさん?
緑さんもまあいいのだが、実際にそんな人いたらいやだろうし・・・

その緑さんが、理想の愛の例として、ショートケーキの話をだすのだが、それがよかった。

この小説を通じて、「ノルウェーの森」ではなく、同じラバーソウルの「インマイライフ」の方を思い出した。
もっとも、「インマイライフ」ではこんなに売れなかったことだろう。
最後レイコさんが50曲をギターで弾く中で、ビートルズの曲は(たぶん)15曲。
残り14曲のメロディーは頭の中で鳴ったのに
不思議なことに「ノルウェーの森」だけがメロディーが思い浮かばなかった。

直子さんのイメージは「ジュリア」かな。

この小説が発売された頃、「100%の恋愛小説」というコピーがはやったが、
文庫の裏の「喪失と再生」という言葉の方が適切かなと思う。

人間、生きている時間が延びるほどいろいろないろいろな「喪失」を経験する。
そういう意味では、以前読んだ時より、今の方がこの小説のことがわかるのかもしれない。

おとし穴 [小説]

新田次郎

「強力伝・孤島」より

さきほど、「凍傷」を名短編、と書いたばかりだが、これこそ名短編。
酒を飲んだ万作さんはおとし穴に落ちるのだが、そこには山犬が・・・。
山犬との静かな対決を通して、いろいろなことを思い出す万作。
どきどき感であっと言う間に読んでしまう22ページ。
おもしろい。

凍傷 [小説]

新田次郎

新潮文庫「強力伝・孤島」より

富士山の気象観測所をつくるために、文字通り命がけでその半生を捧げた佐藤順一技師の物語。

「風速計の接点が磨耗しているから取替えを要す」
昭和7年。8月1日、正式気象観測が佐藤氏から若い観測者の手に移される最後の日、後を引き継ぐ主任技師が気象観測日誌の1ページ目を開いて「先生、何か記念に書いてくれませんか」と手渡されたときの言葉だそうだ。

実名で書かれているし、わざわざ著者が経過も事実に齟齬しないように書いたと明記しているようにかなり佐藤氏の人となりを表しているに違いない。
名短編。

強力伝 [小説]

新田次郎

一時期新田次郎を読みあさった時期があった。
明日のジョーの矢吹丈とこの強力伝の小宮正作は最後に死んだのかどうかがとても気になったふたり。
若気の至りというのか、生きているのか死んだのかはっきりしてくれよ、と思っていた時期がある。

この強力伝は実話だそうなので、白馬に登る機会があったら、ぜひ見てみたい。
しかし、人間が180kgもあるものを本当に背負って3000mの山に登れるものなのだろうか。

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