うめぼし(池田ソメ) [詩]
そりゃ あの時や ナンデガンスヨ
茶の間のガラス戸棚といっしょに
ころげたんでガンス
ガラガラ ガラガラ揺れる拍子に
屋根の上へ ずり出たんでガンス
ずりでる言うても 出られぁしまへんけ
出して貰うたんですよね まあ
神さんか仏さんかに
やれ難儀ややれ痛や
早う息が切れりゃ
参らせてもらえるんじゃにと
梅干を口に入れて貰うたんは
三日目の朝でガンシタ
「この婆さんは 死んでしもうたか
かわいそうに
南無アミダ 南無アミダ」
と わしの顔を撫でんさった
「生きとる 生きとる」言うたら
大きな梅干を
わしの口へ呉れんさった
梅干言うもんは ええもんでガンス
その梅干のおかげでガンシタ
わしは 元気が出ましてなあ
茶の間のガラス戸棚といっしょに
ころげたんでガンス
ガラガラ ガラガラ揺れる拍子に
屋根の上へ ずり出たんでガンス
ずりでる言うても 出られぁしまへんけ
出して貰うたんですよね まあ
神さんか仏さんかに
やれ難儀ややれ痛や
早う息が切れりゃ
参らせてもらえるんじゃにと
梅干を口に入れて貰うたんは
三日目の朝でガンシタ
「この婆さんは 死んでしもうたか
かわいそうに
南無アミダ 南無アミダ」
と わしの顔を撫でんさった
「生きとる 生きとる」言うたら
大きな梅干を
わしの口へ呉れんさった
梅干言うもんは ええもんでガンス
その梅干のおかげでガンシタ
わしは 元気が出ましてなあ
「蛙の死」と「旅よりある女に贈る」 [詩]
この2つの詩が同じ「月に吠える」に入っているのは
どうにも信じがたい。
「蛙の死」を読むたびに、その「ぶきみさ」にぞっとする。
そして、なぜかツェッペリンの「移民の歌」を思い出してしまう。
そのどちらも、はじめて聞いたとき(読んだとき)の衝撃は表現できない。
あの異様な雰囲気は、とてもこわいのだが、なにか惹かれる。
以前、山登りをしていた。
で、「旅よりある女に贈る」は心にしみた。
くりかえすが、この2つの作品が同じ作家から生まれたものとはとうてい信じがたい。
しかも同じ作品集の中にあるなんて。
しかし、どちらもとても好きな詩のひとつである。
どうにも信じがたい。
「蛙の死」を読むたびに、その「ぶきみさ」にぞっとする。
そして、なぜかツェッペリンの「移民の歌」を思い出してしまう。
そのどちらも、はじめて聞いたとき(読んだとき)の衝撃は表現できない。
あの異様な雰囲気は、とてもこわいのだが、なにか惹かれる。
以前、山登りをしていた。
で、「旅よりある女に贈る」は心にしみた。
くりかえすが、この2つの作品が同じ作家から生まれたものとはとうてい信じがたい。
しかも同じ作品集の中にあるなんて。
しかし、どちらもとても好きな詩のひとつである。
山に登る 旅よりある女に贈る(萩原朔太郎 「月に吠える」より) [詩]
山に登る
旅よりある女に贈る
山の山頂にきれいな草むらがある、
その上でわたしたちは寝ころんでゐた。
眼をあげてとほい麓の方を眺めると、
いちめんにひろびろとした海の景色のやうにおもはれた。
空には風がながれてゐる、
おれは小石をひろつて口にあてながら、
どこといふあてもなしに、
ぼうぼうとした山の頂上をあるいてゐた。
おれはいまでも、お前のことを思つてゐるのだ。
旅よりある女に贈る
山の山頂にきれいな草むらがある、
その上でわたしたちは寝ころんでゐた。
眼をあげてとほい麓の方を眺めると、
いちめんにひろびろとした海の景色のやうにおもはれた。
空には風がながれてゐる、
おれは小石をひろつて口にあてながら、
どこといふあてもなしに、
ぼうぼうとした山の頂上をあるいてゐた。
おれはいまでも、お前のことを思つてゐるのだ。
蛙の死(萩原朔太郎 「月に吠える」より) [詩]
蛙の死
蛙が殺された、
子供がまるくなつて手をあげた、
みんないつしよに、
かわゆらしい、
血だらけの手をあげた、
月が出た、
丘の上に人が立つてゐる。
帽子の下に顔がある。
蛙が殺された、
子供がまるくなつて手をあげた、
みんないつしよに、
かわゆらしい、
血だらけの手をあげた、
月が出た、
丘の上に人が立つてゐる。
帽子の下に顔がある。